COPD
学習目標
- COPDを疑う入口を、喫煙歴だけでなく症状、曝露、感染既往、早産、職業歴まで広げる。
- 診断は気管支拡張薬吸入後のスパイロで確認し、FEV1/FVC 0.70未満と正常下限値の違いを説明できる。
- GOLD 2026のA/B/E分類を、症状量と過去1年の増悪歴から判断できる。
- 増悪時にCOPDだけで説明せず、肺炎、心不全、肺塞栓、気胸、不整脈を同時に評価できる。
- 三剤吸入、生物学的製剤、肺容量減量、AATD疑いなど、専門医紹介のタイミングを見極める。
まず押さえるポイント
- COPDは世界的な死亡・障害の主要原因で、未診断が多い。無症状者の一般スクリーニングではなく、症状や曝露のある人へのactive case findingが重要。
- COPDは喫煙だけの疾患ではない。バイオマス、大気汚染、職業性粉じん・化学物質、小児期感染、早産などの非喫煙リスクを拾う。
- 診断には、気管支拡張薬吸入後のFEV1/FVC < 0.70が必要。ただし境界例、高齢者、若年者では正常下限値との関係を意識する。
- GOLD 2026のGroup Eは、過去1年に中等度または重度の増悪が1回以上あれば該当する。旧来の「中等度2回以上または入院1回以上」だけで覚えない。
- 初期吸入はGroup BとGroup EでLABA + LAMAが基本。Group Eで血中好酸球が300/μL以上ならLABA/LAMA/ICSを検討する。
1. 疾患の全体像
COPDは、持続する気流閉塞と呼吸器症状を特徴とする、予防・治療可能な慢性呼吸器疾患である。総合診療では「スパイロで診断して終わり」ではなく、曝露、症状、増悪、併存症、吸入手技、生活機能をまとめて診る必要がある。
患者が「年齢のせい」「運動不足」と考えている息切れの中にCOPDが隠れる。慢性咳嗽、喀痰、労作時息切れ、反復する下気道感染、喫煙・受動喫煙・職業曝露があれば、スパイロにつなげる。
2. 疫学・インパクト
COPDは世界の主要死因の一つで、年間300万人超が死亡し、2050年には患者数が約6億人に達する可能性がある。世界的にはCOPDの半数以上が非喫煙関連とされ、特にバイオマス曝露、大気汚染、職業曝露、小児期要因が重要である。
重要なのは、COPDを「喫煙男性の病気」に閉じ込めないこと。日本の外来でも、非喫煙女性、調理・暖房曝露、粉じん作業、喘息との重なり、結核後や気管支拡張症との併存を丁寧に確認する。
3. 診断の考え方
外来ミニマムセット: 初診でここまで確認する
専攻医1年目が外来で迷わないための最低限の流れは、疑う → 今日の危険を除く → スパイロにつなぐ → 診断後にA/B/Eへ進むである。無症状者全員にスパイロを行うのではなく、症状またはリスクのある人を拾い上げる。
| 場面 | 最低限確認すること | 実務メモ |
|---|---|---|
| 症状 | 労作時息切れ、慢性咳嗽、喀痰、喘鳴、胸部圧迫感、反復する下気道感染 | 「年齢のせい」「運動不足」と言われやすい。階段、坂道、買い物、入浴、着替えで聞く |
| リスク | 喫煙pack-years、受動喫煙、職業性粉じん/化学物質、バイオマス、大気汚染、小児期感染、早産、結核後 | 喫煙だけで閉じない。非喫煙女性や粉じん作業歴も拾う |
| 今日の測定 | SpO2、呼吸数、脈拍、体重/BMI、胸部聴診、浮腫、頸静脈、心不全所見 | SpO2だけで安心しない。呼吸数と会話可能性を同時に見る |
| 今日の検査 | 胸部X線、血算と好酸球、必要時CRP、BNP/NT-proBNP、心電図、喀痰、胸部CT | 診断確定はスパイロ。X線やCTは鑑別、肺癌、気腫、気管支拡張症の評価に使う |
| 確定診断 | post-BD spirometryを依頼し、FEV1/FVC <0.70を確認 | pre-BDで閉塞があればpost-BDで確定へ。閉塞なしでも強い疑いなら再検・追加評価 |
初診で必ず分けるのは、「COPDが疑わしい安定外来」か「今日の急性増悪・他疾患があり得る外来」かである。急な息切れ、胸痛、発熱、SpO2低下、頻呼吸、頻脈、意識変容があれば、COPD診断評価よりも肺炎、心不全、肺塞栓、気胸、不整脈、急性冠症候群の評価を優先する。
疑う入口
COPDを疑う症状は、進行性または労作時の息切れ、慢性咳嗽、慢性喀痰、喘鳴、胸部圧迫感、反復する下気道感染である。症状が乏しくても、曝露歴が強い人や画像で気腫がある人では、スパイロの適応を考える。
スパイロメトリー
診断は、気管支拡張薬吸入後のFEV1/FVC < 0.70で確認する。FEV1の%予測値は気流閉塞の程度と予後評価に重要だが、A/B/E分類や吸入治療の調整をFEV1だけで決めない。
FEV1/FVC 0.70固定比は実務上使いやすい一方、高齢者では過剰診断、若年者では過少診断の可能性がある。境界例では正常下限値、症状、曝露、画像、経時変化を合わせて判断する。
スパイロの実務:
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| pre-BD FEV1/FVCが閉塞を示さない | COPDは除外寄り。ただし症状・曝露・画像から疑いが強ければpost-BD、別日再検、他疾患評価を行う |
| pre-BD FEV1/FVCが閉塞を示す | post-BD spirometryでCOPD診断を確認する |
| post-BD FEV1/FVCが0.60-0.80 | 測定変動で判定が変わり得るため、別日に再検を検討する |
| follow-up中のスパイロ | 吸入薬を中止する必要はない。症状、増悪、治療効果の評価と組み合わせる |
| 急性増悪中・感染流行時 | 緊急性と感染対策を優先し、診断目的の routine spirometry は安定後に回す |
GOLD 1-4: 気流閉塞のスパイログレード
GOLD 1-4は、A/B/E分類とは別物である。A/B/Eは「症状量」と「過去1年の増悪歴」で治療の入口を決める分類で、GOLD 1-4は「気管支拡張薬吸入後FEV1の%予測値」で気流閉塞の程度を表す分類である。GOLD 2026も、気流閉塞の重症度と症状・健康状態の相関は弱いと明記しているため、FEV1だけで患者のつらさや治療選択を決めない。
前提として、COPD診断は気管支拡張薬吸入後FEV1/FVC < 0.70を満たすこと。そのうえで、FEV1の%予測値で以下のように気流閉塞を段階づける。
| グレード | 日本語での表現 | 気管支拡張薬吸入後FEV1 %予測値 | 使いどころ |
|---|---|---|---|
| GOLD 1 | 軽度の気流閉塞 | FEV1 ≥80% | 症状が軽いとは限らない。診断後のベースラインとして記録する |
| GOLD 2 | 中等度の気流閉塞 | 50% ≤ FEV1 <80% | 生物学的製剤の試験対象にも含まれることが多い層。症状・増悪歴と組み合わせて評価 |
| GOLD 3 | 重度の気流閉塞 | 30% ≤ FEV1 <50% | 増悪、低酸素、肺高血圧、低栄養、運動耐容能低下をより意識する |
| GOLD 4 | 最重症の気流閉塞 | FEV1 <30% | 在宅酸素、NIV、肺容量減量、移植評価など専門医連携を強く考える |
この表は「気流閉塞の程度」を説明するための表であり、A/B/E分類の代わりではない。例えばGOLD 2でも増悪を繰り返せばGroup Eになり得るし、GOLD 4でも症状の訴えが少ない患者は存在する。総合診療での実装は、post-BD FEV1/FVCで診断し、FEV1 %予測値で気流閉塞グレードを記録し、mMRC/CAT/CAATと過去1年の増悪歴でA/B/Eを決める、という順序にすると混線しにくい。
身体所見
身体所見だけでCOPDは診断できないが、進行例では手がかりになる。過膨張による気管短縮、口すぼめ呼吸、Hoover徴候、tripod姿勢に伴うDahl徴候は「COPDらしさ」を上げる所見であり、見つけたら重症度、呼吸仕事量、低酸素・高二酸化炭素血症の評価につなげる。
4. 初期評価とA/B/E分類
初期評価は、症状量、増悪歴、血中好酸球、併存症で組み立てる。症状量はmMRC、CAT/CAATで評価する。GOLD 2026ではCATとCAATは同等に扱われ、スコアは互換可能と記載されている。
診断後の外来テンプレート
COPD診断後は、次の順番で記録すると治療選択がぶれにくい。
COPD診断確認 → GOLD 1-4記録 → CAT/CAATまたはmMRC → 過去1年の増悪歴 → 血中好酸球 → 併存症 → A/B/E → 治療開始
| 項目 | 記録する内容 | 判断に使うこと |
|---|---|---|
| 診断確認 | post-BD FEV1/FVC <0.70 | COPDとして扱ってよいか |
| 気流閉塞 | GOLD 1-4、FEV1 %予測値 | 予後、専門医紹介、肺容量減量や酸素評価の文脈 |
| 症状量 | CAT/CAAT、またはmMRC | A/B/E分類、治療効果判定 |
| 増悪歴 | 抗菌薬/全身ステロイドを要した外来増悪、救急受診、入院を分ける | Group E判定、ICSや生物学的製剤の検討 |
| 好酸球 | 血中好酸球数、可能なら安定期の値 | ICS追加、生物学的製剤紹介の判断 |
| 併存症 | 喘息、心疾患、骨粗鬆症、肺癌、気管支拡張症、NTM、低栄養、抑うつ | 息切れの原因、薬剤選択、紹介判断 |
Group Eは、症状量にかかわらず、過去1年に中等度または重度増悪が1回以上あれば該当する。中等度増悪は抗菌薬または全身ステロイドを要した増悪、重度増悪は救急受診または入院を要した増悪として記録する。
CAT/CAAT: 8項目で健康状態への影響を見る
CATはCOPD Assessment Test、CAATはChronic Airways Assessment Testで、GOLD 2026ではCATとCAATは同等でスコア互換可能とされる。8項目をそれぞれ0-5点で評価し、合計0-40点。GOLDのA/B/E分類では、CAT/CAAT 10点以上を「症状が多い」側の目安にする。
| 項目 | 0点側 | 5点側 | 実務での聞き方 |
|---|---|---|---|
| 咳 | まったく咳がない | いつも咳が出る | 「普段どのくらい咳が出ますか」 |
| 痰 | まったく痰がない | 胸が痰でいっぱい | 「痰はどのくらい出ますか」 |
| 胸部圧迫感 | 胸の圧迫感がない | 胸がとても苦しい | 「胸の締めつけや重さはありますか」 |
| 坂道・階段での息切れ | 息切れしない | とても息切れする | 「坂道や階段で息が切れますか」 |
| 家での活動制限 | 家での活動に制限がない | 家での活動がかなり制限される | 「家事や身の回りの動作に支障がありますか」 |
| 外出への自信 | 肺の状態を気にせず外出できる | 肺の状態が心配で外出しにくい | 「外出に不安はありますか」 |
| 睡眠 | よく眠れる | 肺の症状で眠れない | 「咳や息切れで眠りが妨げられますか」 |
| 活力 | 活力が十分ある | まったく活力がない | 「日中の元気さ、疲れやすさはどうですか」 |
点数は単発値だけでなく、経時変化を見る。例えば吸入手技の修正、呼吸リハビリ、増悪後フォローでCAT/CAATがどう変わるかを見ると、患者にとって意味のある改善を拾いやすい。
mMRC: 息切れだけを簡便に見る
mMRCは息切れの程度に絞った0-4の尺度である。GOLDのA/B/E分類では、mMRC 2以上を「息切れが多い」側の目安にする。ただしmMRCは咳、痰、睡眠、活力などを拾えないため、GOLD 2026は包括的な症状評価も推奨している。
| mMRC | 状態 | 実務での意味 |
|---|---|---|
| 0 | 激しい運動でだけ息切れする | 日常生活の息切れは少ない |
| 1 | 急いで歩く、または緩い坂を上ると息切れする | 労作で症状が出始める |
| 2 | 同年代より歩くのが遅い、または自分のペースで歩いていても息継ぎのため立ち止まる | A/B/E分類では症状が多い側 |
| 3 | 約100 m歩く、または数分歩くと息切れで立ち止まる | 生活機能低下が明確 |
| 4 | 息切れが強くて外出できない、または着替えでも息切れする | 重い生活制限。低酸素、併存症、リハビリ、専門医連携を考える |
増悪リスクは、過去1年の中等度または重度増悪で判断する。中等度増悪は抗菌薬または全身ステロイドを要する増悪、重度増悪は救急受診や入院を要する増悪として実務化するとよい。
ABE分類の実務整理:
| グループ | 症状量 | 増悪歴 | 初期治療 |
|---|---|---|---|
| A | mMRC 0-1またはCAT/CAAT <10 | 中等度・重度増悪なし | 気管支拡張薬。可能なら長時間作用性 |
| B | mMRC ≥2またはCAT/CAAT ≥10 | 中等度・重度増悪なし | LABA + LAMA |
| E | 症状量を問わない | 過去1年に中等度または重度増悪 ≥1回 | LABA + LAMA。好酸球 ≥300/μLなら三剤も検討 |
5. 治療の骨格
治療目標は、現在の症状を減らすことと、将来の増悪・入院・死亡リスクを減らすことの二本立てである。
非薬物療法では、禁煙、曝露回避、ワクチン、身体活動、栄養、呼吸リハビリテーションを必ず扱う。ワクチンはインフルエンザ、肺炎球菌、COVID-19、RSV、Tdap、帯状疱疹を年齢・リスクに応じて確認する。
薬物療法は、Group Aでは気管支拡張薬、Group BではLABA + LAMA、Group EでもLABA + LAMAが基本である。ICSはCOPD全例に足す薬ではない。喘息合併、増悪歴、血中好酸球、肺炎リスク、結核既往、反復感染を見て判断する。
初期治療を始める前の確認
| A/B/E | 第一選択 | ICSを考える場面 | 避けること |
|---|---|---|---|
| Group A | 気管支拡張薬。可能なら長時間作用性を選ぶ | 通常は初期からICSを足さない | 症状が乏しいのに吸入薬だけ増やす |
| Group B | LABA + LAMA | 喘息合併があれば喘息治療を優先して考える | 息切れの原因を心不全、貧血、低栄養、運動不足と鑑別せず薬剤追加する |
| Group E | LABA + LAMA | 好酸球 ≥300/μLならLABA/LAMA/ICSを検討 | 肺炎・結核既往・反復感染リスクを見ずにICSを足す |
吸入薬を出す前に確認すること:
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 吸気流速 | DPIを吸えるか。吸気が弱い場合はデバイス選択を見直す |
| 手技 | 初回処方時に実演してもらう。できれば薬剤師・看護師とも共有する |
| デバイス適合 | 視力、手指巧緻性、認知機能、口腔内乾燥、介助者の有無を見る |
| 費用・継続性 | 高価で継続できない処方は実装に失敗する |
| アドヒアランス | 回数、タイミング、残薬、患者の理解を確認する |
非薬物療法チェックリスト:
| 項目 | 最低限の実装 |
|---|---|
| 禁煙・曝露回避 | 紙巻き、加熱式、受動喫煙、職業曝露を確認し、禁煙支援につなげる |
| ワクチン | インフルエンザ、肺炎球菌、COVID-19、RSV、Tdap、帯状疱疹を年齢・リスクで確認する |
| 呼吸リハビリ | 息切れ、活動制限、増悪後、Group B/Eでは特に意識して紹介する |
| 身体活動 | 歩数や外出頻度など、患者が追える指標に落とす |
| 栄養・体重 | 体重減少、低栄養、サルコペニアを確認する |
| 増悪時アクションプラン | 息切れ悪化、痰量増加、膿性痰、発熱、SpO2低下時の受診目安を共有する |
生物学的製剤: GOLD 2026からの整理
生物学的製剤は、初期治療ではなく、LABA/LAMA/ICSでも増悪が続く好酸球高値COPDの次段階として扱う。GOLD 2026のフォローアップ治療では、血中好酸球 ≥300 cells/μLで増悪が続く場合に、dupilumabまたはmepolizumabを検討する。
| 薬剤 | 標的 | GOLD 2026での対象像 | GOLDで示された効果 |
|---|---|---|---|
| Dupilumab | IL-4/IL-13受容体共有成分 | COPD、慢性気管支炎あり、LABA/LAMA/ICS中でも過去1年に中等度増悪 ≥2回または重度増悪 ≥1回、中等度〜重度の気流閉塞、血中好酸球 ≥300/μL | 52週で増悪減少、肺機能改善、健康状態改善 |
| Mepolizumab | IL-5 | COPD、慢性気管支炎の有無を問わない、LABA/LAMA/ICS中でも過去1年に中等度増悪 ≥2回または重度増悪 ≥1回、中等度〜最重症の気流閉塞、血中好酸球 ≥300/μL | 52-104週で中等度/重度増悪を減らし、救急受診・入院につながる増悪も減少 |
| Benralizumab | IL-5受容体α鎖 | COPD、増悪歴あり、中等度〜最重症の気流閉塞、LABA+ICS、LABA+LAMA、またはLABA/LAMA/ICS中 | 年間COPD増悪率の低下は示されなかった |
ここでいうGOLD 2-4は、A/B/E分類ではなくスパイロによる気流閉塞グレードである。GOLD 2は中等度、GOLD 3は重度、GOLD 4は最重症の気流閉塞を指す。総合診療医の役割は、生物学的製剤を単独で開始することではなく、「三剤吸入でも増悪が続く」「好酸球 ≥300/μL」「慢性気管支炎の有無」「気流閉塞の程度」「過去1年の増悪回数」をそろえて、呼吸器内科に相談すべきphenotypeを拾うことである。
6. 増悪対応
増悪では、呼吸困難、喀痰量増加、膿性痰、喘鳴、咳嗽増悪を確認する。同時に、肺炎、心不全、肺塞栓、気胸、不整脈、薬剤性、貧血などを評価する。COPD患者の急な息切れを、最初からCOPD増悪と決め打ちしない。
治療は、SABA ± SAMA、酸素投与、全身ステロイド、抗菌薬、NIV適応の判断が中心になる。中等度以上ではプレドニゾロン40 mg/日を5日間が標準的な考え方。抗菌薬は膿性痰、痰量増加、呼吸困難増悪が揃う場合や細菌感染が疑われる場合に検討し、期間は5日程度を基本にする。
緑膿菌リスクは、直近90日の入院、過去1年の抗菌薬反復、重症COPD、過去の喀痰緑膿菌、全身ステロイド使用などで上がる。喀痰培養は有用だが、定着と起炎菌を分けて解釈する。
増悪外来の安全判断
初期対応では、帰宅できるかより先に、救急・入院相談が必要な所見を探す。
| 判断 | 目安 | 対応 |
|---|---|---|
| 外来帰宅を検討 | 会話可能、意識清明、SpO2が普段から大きく低下していない、呼吸数 <24/分、脈拍 <95/分、重い鑑別疾患が乏しい | SABA ± SAMA、必要時ステロイド/抗菌薬、48-72時間以内の再評価、悪化時受診指示 |
| 当日再評価・短時間観察 | SpO2低下が軽度、呼吸数や脈拍が境界、食事・睡眠に支障、独居や理解不十分、肺炎/心不全の可能性が残る | 吸入反応、酸素、検査結果を見て帰宅可否を再判断 |
| 救急搬送・入院相談 | 会話困難、意識障害、チアノーゼ、SpO2 <92%または普段より3%以上低下、呼吸数 ≥24/分、脈拍 ≥95/分、CO2貯留疑い、循環不安定、肺炎/心不全/肺塞栓/気胸疑い、在宅支援不足 | 救急対応。ABG/VBG、胸部画像、心電図、採血を含めて評価し、NIV適応を考える |
GOLD 2026のRome分類では、呼吸困難VAS、呼吸数、脈拍、安静時SpO2または普段からの低下、CRPを用いて増悪重症度を評価する。プライマリケアでは、少なくとも呼吸困難の強さ、呼吸数、脈拍、SpO2を測定する。中等度以上を疑う場合や、低酸素・高二酸化炭素血症・アシドーシスが疑われる場合は、外来で粘らない。
7. 専門医紹介のタイミング
紹介を考える状況:
- 若年発症、非典型な進行、家族歴、下葉優位の汎小葉性気腫など、AATDを疑う。
- 重症気腫で肺容量減量、気管支鏡的治療、移植適応の検討が必要。
- COPD関連肺高血圧が重い、または右心不全が疑われる。
- LABA/LAMA/ICSでも増悪を繰り返し、好酸球高値で生物学的製剤の検討が必要。
- 重症呼吸不全、NIV、ICU管理、在宅酸素・在宅NIVの判断が必要。
- 肺癌、間質性肺疾患、気管支拡張症、NTM、心疾患など鑑別・併存症が複雑。
紹介状には、喫煙歴、気管支拡張薬吸入後スパイロ、CAT/CAATまたはmMRC、過去1年の増悪歴、血中好酸球、画像所見、吸入手技確認、現在の吸入薬とアドヒアランスを入れる。
フォローアップで毎回見ること
治療開始後は、4-8週を目安に初回フォローを置く。重症例、増悪後、手技不安、独居、低酸素がある場合はより早く見る。
| 項目 | 見ること | 次の一手 |
|---|---|---|
| 症状 | CAT/CAATまたはmMRC、生活で困る動作 | 改善乏しければ手技、併存症、リハビリ、薬剤調整を確認 |
| 増悪 | 受診、抗菌薬、全身ステロイド、救急、入院 | Group E再確認、ICSや専門医紹介を検討 |
| 吸入手技 | 実演、吸気流速、デバイス適合 | できていなければ薬剤変更より先に手技修正 |
| アドヒアランス | 使用回数、残薬、費用、副作用 | 続けられる処方へ調整 |
| 安全性 | 肺炎、嗄声、口腔カンジダ、動悸、尿閉、緑内障症状 | ICSや抗コリン薬のリスクを見直す |
| 併存症 | 心疾患、肺癌、骨粗鬆症、低栄養、抑うつ、気管支拡張症/NTM | 息切れをCOPDだけで説明しない |
| 予防 | 禁煙、ワクチン、身体活動、呼吸リハビリ、体重 | 薬以外の介入を毎回更新する |
受診ごとの記録は、症状スコア、増悪歴、SpO2、体重、吸入手技、アドヒアランス、副作用、薬剤変更理由、好酸球、併存症を最小セットにする。
紹介状テンプレート:
COPD疑い/診断済み。喫煙・曝露歴: __。post-BD FEV1/FVC: __、FEV1 %予測値: __、GOLD 1-4: __。A/B/E: __。CAT/CAATまたはmMRC: __。過去1年の増悪: 外来__回、救急__回、入院__回。血中好酸球: __/μL。画像所見: __。現行吸入薬: __。吸入手技確認: 済/未。相談目的: 診断確認/治療調整/増悪反復/酸素・NIV/生物学的製剤/肺容量減量/AATD疑い。
参考文献
- Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease. Global strategy for the diagnosis, management, and prevention of chronic obstructive pulmonary disease. 2026.